バルキーノとは、複数の長さの異なる板を平行に並べて固定した漁具です。バルキーノとはイタリア語で「小舟」の意味で、日本語では「双板艇」とでも申しましょうか。 バルキーノは、ラインを結びつけ、砂浜や防波堤などの海岸から人間が引っ張ると、沖へ向かって進む性質があります。この性質を利用し、トローリングのようにルアーを曳いたり、仕掛けを沖合に投入したりします。
世界中で使われるバルキーノ
バルキーノは世界中で愛されています。イタリアなど地中海を中心とした地域では特に盛んですが、ユーラシア大陸の広い範囲でも愛用されています。ロシアなどにも愛好者が多くいます。バルキーノは海だけでなく、河川や湖でも使用されています。陸側から人間がラインを引っ張って使うだけでなく、ボートで引っ張ったり、竿で引っ張ったり、世界各地によって使い方は様々です。 北米でも「プレナーボード」というバルキーノがあり、モーターボートで引っ張るトローリング漁具として使われています。
遊具としてのバルキーノ
バルキーノは漁具として誕生したものですが、遊具としても十分に楽しめるものです。好きな絵を描いたり、船や潜水艦の艤装を施して航行させたり(⇒バルキーノ職人の遊び心)、魚やクジラなどの絵を描いて泳がせてたり、工夫次第でとても楽しむことができます。 遊具以外にも使い道があります。プランクトンネットを引っ張らせて海の生き物を調べることもできますし、水中カメラを取り付けて海中の映像や写真を撮影することもできます。 工夫を重ねれば人命救助の救難具として、オイルフェンスを張るための運搬船として、海洋のゴミを集める回収船として使うこともできるでしょう。
潜水艦風に改造したバルキーノ。バルキーノはモデラーも力を発揮して楽しむことができる遊具。
バルキーノの原理
基本的なバルキーノは2枚の長さが異なる板から成り立っています。短い板にはバーが付いており、バーに通したリングに結びつけたラインが自由に動くようにできています。 ラインでバルキーノを引っ張ると、バルキーノは海水の抵抗を受けます。陸側に近い短い板よりも、沖側の長い板の方が大きな抵抗を受けるため、バルキーノは舳先を沖に向ける形となります。テンションをかけたまま、少しずつラインを伸ばしながら引っ張ると、バルキーノはどんどん沖へ向かって進んでいきます。 凧揚げを思い浮かべてください。風を受けて空に揚がっていく凧と、海水を受けて沖に出て行くバルキーノは、とてもよく似ています。
バルキーノは「浮き」
バルキーノは船のような形をしていますが、動力がないため船ではありません。トローリングとほとんど同じことができても、それは人間が引っ張るからであって、ほとんどの自治体で禁止されている、「遊漁者によるトローリング」にはあたりません。 バルキーノは強いて分類すると、「浮き」になります。人間が引っ張れば動きますが、引っ張らずにラインを伸ばせば潮に乗って流れていくだけです。